【これからの日本と日本のエンジニア】
日本における高度成長経済は終焉し、人口の減少とともに製造業の市場も国内だけを見ていては生き残れない時代になりました。 経済が常に成長している間は品質の高い商品を安く売っても量販の効果で企業は成長し続けることができましたが、人口が減少し市場規模が縮小しつつある日本で同じことを続ければ、アジアの新興国との値引き合戦になって利益が減っていくだけです。利益が減ると従業員のサラリーも減り、消費が減るというデフレスパイラルが起こります。
日本は高付加価値の製品やサービスを高く売っていかなければ世界の中で生き残ることはできないでしょう。アジアの新興国と同じ価格帯で勝負してはいけないのです。
日本の市場が減少していく一方で、アジア全体の市場規模は拡大しています。日本はここに向かって商品やサービスを供給していかなければ、持続的な成長を達成することはできません。
一つだけ確実にいえるのは、これまで高度成長期に成功してきたやり方をそのまま続けても未来はないということなのです。過去の栄光を忘れられずにこれまでのやり方を続けていると、あなたが所属している組織はジリジリと利益を減少させていくでしょう。
もしそうなってしまったにも関わらず、組織が変革を遂げられなかったら、そのしわ寄せは技術者にも及ぶ可能性があります。サラリーを減らされた上でリストラ後の少ない人数でこれまで以上の仕事をこなせと言われる状況です。これはエンジニアにとっても負のスパイラルです。能力が高い人ほど負荷が大きくなり、創造的な仕事が与えられなくなってモチベーションが下がり、結果的にパフォーマンスも落ちて仕事へのやりがいを失っていきます。
組込みソフトウェアギルドのメンバーは、ソフトウェアエンジニアはモチベーションを高く保ち、高度なスキルを身につけ創造的な仕事をすることによって組織や社会に貢献できる人材へと成長する必要があると考えています。
成長への意欲をもち技術者としてのポテンシャルがあるにも関わらず実績に結びつけることができていないエンジニアやマネージャ、プロジェクトを組込みソフトウェアギルドは支援したいと思っています。
【知識労働者としての未来】
--- ジャック・フィッツエンツ著 『人的資本のROI』 より引用 --- 人間は、ほとんど無限の多様性と予測困難性を持つがゆえに、それを評価することは、あらかじめ操作スペックが設定されている電気・機械部品に比し、はるかに困難である。それにもかかわらず、人材は、それ自身で主体的に価値を生み出すことのできる唯一の要素である。その他の変数ーキャッシュ、預金、材料、工場、設備、エネルギーーは、自身では何も提供せず、人間がー現場の労働者であれ、高度な専門家であれ、あるいはもっとも地位の高い経営幹部であれーその行為によって、可能性を効果発現につなげるまで、何の価値も生まない。
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20世紀の経営理論家のリーダーである、ピーター・ドラッカーは、「今日、および、少なくとも次なる10年間に、組織にとっての最大の課題は、工業社会から知識経済への移行に応えられる組織像を作り上げることである」と主張した。
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人間だけが、その固有の人間性とモチベーション、学習で得たスキル、そして道具を操作する能力などの活用を通じて価値を生成する。
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ピーター・ドラッカーやジャック・フィッツエンツの主張からも分かるように21世紀のほとんどの労働者が知識労働に就く世界での主役は人間のインテリジェンスであり、人間の肉体ではなく頭脳が他者と競い合う際の武器となります。適正な競争が人間を高めることはスポーツや芸術の世界を見れば一目瞭然です。日本の技術者も国内や世界のエンジニアと競争することで自分自身を成長させることができるのです。
そして、組織において価値を創造するのも人間であり技術者であることを忘れてはいけません。価値を創造しうるポテンシャルを持つエンジニアやマネージャが組織の中で埋没し、疲弊し、朽ち果てていくようなことがあってよいはずがありません。
私たちは、日本国内だけでは生き残りが厳しくなってきたこの時代において、ポテンシャルを持ったやる気のあるソフトウェアエンジニアは、高い技術を身につけてクリエイティブな気持ちで仕事に取り組み、組織や社会に貢献してもらいたいと考えています。その過程は楽ではないかもしれませんが、一定の成果を出すまでの厳しさは自分が成長するために必要な乗り越えなければいけない壁であり、その苦しみの先には創造的な未来が待っています。
私たち組込みソフトウェアギルドのメンバーは、このような想いを共有できる技術者やマネージャーとコンタクトを取り、支援していきたいのです。
私たち組込みソフトウェアギルドは単に困っている技術者やマネージャを助ける活動がしたくてギルドを結成したのではありません。ポテンシャルを持ったやる気のあるソフトウェア技術者やマネージャー、リーダーを支援することで、自分自身のモチベーションを高め、支援技術のスキルも向上させたいのです。
あるものは無償で支援情報を、あるものは対価をいただくことで具体的なサービスや支援を提供します。ただし、知識労働であるソフトウェア開発、プロジェクトマネジメントからすれば、そられの価値にはそれほど大きな違いはないかもしれません。支援は受け取る者の受け取り方によって効果の大きさが変わります。
大事なことは目的を持って支援を受け止め、知識労働者として自分自身が成長することで、組織や社会に対して価値を創造できるようになることです。
この想いを共有できる、現場のソフトウェアエンジニアやマネージャ、リーダーの皆様は組込みソフトウェアギルドにコンタクトして欲しいと思います。
2011年2月14日 組込みソフトウェアギルド 酒井 由夫
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